お手伝いの教え方。やり方は1回見せて、直すのは終わってから
/ ビーズニーズ株式会社
お手伝いを1つ任せることにして、担当も決めた。ここまでは決まったのに、実際に頼むと、やり方を教えるところでつまずきます。横で見ていると「そうじゃなくて」と口が出て、終わったあとにこちらがやり直す。何度か繰り返すうちに、自分でやったほうが早い気がしてきます。
つまずく場所は、説明の足りなさではないことが多いです。どこまでやれば終わりかが決まっていないほうです。終わりが決まっていないと、やっている最中にこちらの基準が足されていきます。先にそこを決めると、見せるのは1回で済み、直すのは終わってからに移せます。
お手伝いの教え方で先に決めるのは、どこまでやれば終わりか
教える前に決めるのは、やり方ではなく終わりです。洗濯物なら「たたんで棚に入れるまで」、食器なら「シンクに運んで水に浸けるまで」。ここが決まっていれば、途中の手つきがこちらと違っても、終わったかどうかは子どもにも分かります。
終わりを決めていないと、目に入ったところから足していくことになります。たたみ終わったところで「ついでに引き出しも」、運び終わったところで「そのまま洗っておいて」。1つずつは小さい追加ですが、子どもから見ると終わりが動いています。動くかぎり、どこまでやっても声がかかる作業になります。
決めるときに引っかかるのが、「きれいに」や「ちゃんと」です。これは終わりを決める言葉ではなく、こちらの合格点です。小学校学習指導要領の解説(文部科学省、2017年)には、整理・整頓の仕方を考える視点として、何がどこにあるか、必要な物がすぐに取り出せるか、空間を有効に使えるかの3つが書かれています。どれも目で確かめられる形になっているのが、「きれい」との違いです。
家でも同じように書き直せます。「机をきれいにする」ではなく「教科書が本立てに立っていて、机の上に出ているのは1つもない」。この形なら、できたかどうかを子どもが自分で確かめられます。
家事のやり方に正解は無い。学校も家庭ごとに違う前提で教えている
整理・整頓や清掃の仕方は、家庭によって異なります。だから学校でも、児童が家庭での工夫を持ち寄って交流する活動として扱います(小学校学習指導要領の解説 家庭編、文部科学省、2017年)。うちは洗ったらすぐ干す、よその家はいったんかごにためてから干す。どちらでも乾きます。正しいやり方を探すより、我が家のやり方を1つ決めるほうが早く終わります。
学校で全部を習ってくることもありません。家庭科の授業時数は、第5学年が60回、第6学年が55回で、2年間で115回が標準とされています。1回は45分です(学校教育法施行規則 別表第一)。その115回のなかに、食事、衣服、住まい、家族の仕事、お金の使い方までが入ります。どの内容に何回あてるかは学校が決めるので、清掃や洗濯はこの115回のなかの一部です。
学校の学習そのものが、家で教わることを織りこんでいます。家庭の仕事の課題を解決する方法として挙げられているのは、仕事の内容や手順を調べること、家族に教えてもらうこと、これまでのやり方を振り返って話し合うことの3つです(同解説)。親が教えるのは、学校の代わりではありません。
1つの家事は手順に分かれる。渡すのは全部ではなく一部だけ
家事は1つの作業ではなく、手順の並びです。洗濯は、洗濯物の状態や汚れの点検、洗う、すすぐ、絞る、干すの5つに分けて教えられます(同解説)。家事に限った話ではなく、ミシンを使う製作も、計画、準備、製作、仕上げ、片付けという流れで同じように分けられ、効率や安全のために作業の順番を決める必要があると添えられています。
渡すのは、この並びの一部です。全部を渡すと、どこでつまずいたのかが分からないまま、次の日も最初から教えることになります。一部だけを渡せば、つまずいた手順だけを見せ直せます。
どこで切るかは、終わりが目で分かるところで決まります。絞ってから干すところまでを渡せば、ハンガーの数で終わりが分かります。洗濯機から出すところまでを渡すなら、かごに移し終わって洗濯機が空になった状態が終わりです。目で分からないところで切ると、終わったかどうかを聞くところからやり直しになります。
渡す範囲が決まれば、見せるのは1回で足ります。手を止めて説明せずに、自分で1回やりながら、終わりの状態だけ口に出す。「ハンガーが全部かかったら終わり」。そこで代わってもらって、気づいたことは終わってから言います。
渡す範囲は、できるようになってから広げられます。最初から全部を渡さなくても、1つ増やすのは次の週でも間に合います。
直すのは、やっている最中ではなく終わったあと
口を出すのを終わったあとに移すと、教え直しが1回で済むことが増えます。学校の家庭科も、計画を立て、実践し、そのあとに振り返るという順番です。振り返りで見るのは、計画どおりにできたことと、できなかったこと。そこで出たものを次の実践につなげます(同解説)。直す場所は、実践の最中ではなく、そのあとに置かれています。
やっている最中に直すと、子どもは、できていないと言われながら続けることになります。手は止まり、終わったときに残りやすいのは、作業の手順よりも言われた回数のほうです。終わってからなら、できていた手順を先に数えられます。
伝えるのは1つにしておく、というやり方もあります。3つまとめて言うと、次に頼むときに身構えます。残りは、次に同じお手伝いをする日まで持っていても遅くありません。同じ手順を何日か続けると、教え直す場面そのものが減っていきます。家庭科が目指しているのも、分担した仕事をその後の生活でも続けられるようになることです。
決めたことは、1枚に書いておくと渡すときに短くなります。
お手伝いの引きつぎメモ
| この1つについて決める | |
|---|---|
| お手伝いの名前 | |
| 渡す手順(どこから、どこまで) | |
| これができたら終わり(目で分かる形で) | |
| 終わったことをどう残すか(押す・書く・言う) | |
| 次に区切りを見直す日 |
- 「きれい」「ちゃんと」を、目で分かる言葉に書き直した
- やっている最中は言わず、終わってから1つだけ伝えると決めた
終わったことをどう残すかも、同じときに決めておくと続きます。紙に書いて冷蔵庫に貼る形もあります。ゴホウビーストは、おうちの方が「できたね」を押すとコインがたまる形なので、押すまでが終わり、と決めてしまう手もあります。押したあとは子どもが自分でビーストを引くので、終わりの合図が子どもの側にも届きます。
教えることは、1回で終わる作業ではありません。それでも、終わりの線が1本決まっていれば、明日の夕方に横に立っている時間は短くなります。手順の全部を教え直すのではなく、区切りを1つ決めるところから始められます。
この記事のまとめ
お手伝いの教え方で、最初に決めることは何ですか
やり方ではなく、どこまでやれば終わりかです。洗濯物なら「たたんで棚に入れるまで」のように、目で分かる形にします。終わりが決まっていないと、やっている最中にこちらの基準が足されていき、子どもから見ると終わりが動き続けます。
家事は、正しいやり方を教えないといけませんか
整理・整頓や清掃の仕方は家庭によって異なるため、学校でも家庭ごとの工夫を持ち寄る活動として扱われます(小学校学習指導要領の解説 家庭編、文部科学省、2017年)。家で教えるのは我が家のやり方で、よそと同じである必要はありません。
お手伝いは、手順を全部まとめて任せたほうがいいですか
手順の一部だけを渡す形もあります。小学校学習指導要領の解説(文部科学省、2017年)には、洗濯の手順として洗濯物の点検、洗う、すすぐ、絞る、干すの5つが挙げられています。終わりが目で分かるところで切ると、つまずいた手順だけを見せ直せるので、毎回最初から教えることになりません。
子どもがやっている最中に、やり方を直してもいいですか
終わってから1つだけ伝える形があります。学校の家庭科は、計画を立てて実践し、そのあとに計画どおりにできたこと、できなかったことを振り返る順番です(小学校学習指導要領の解説、文部科学省、2017年)。最中に直すと、できていないと言われながら続けることになります。