小学生がお手伝いをしない。決めるのは「いつ」と「誰の担当か」
/ ビーズニーズ株式会社
洗濯物はたたまれないまま、かごに入って夕方まで置いてあります。頼めば返事はするのに手は動かず、もう一度言って、三度目で少し声が強くなり、そこでようやく腰が上がります。毎日これを繰り返していると、頼むほうが先に疲れてきます。
こういうとき、先に試すのは声のかけかたです。やわらかく言ってみる、先にお礼を言ってみる、やる気の出そうな言い回しを探してみる。それでも次の日には同じところで止まるので、増えていくのは言う回数のほうになります。
言いかたではなく、始まる前に決めておくことを変えると、この繰り返しは短くなります。決めるのは、いつやるかと、誰の担当にするかの2つです。どちらも今日のうちに決められて、決めたあとは言う回数が減っていきます。
小学生がお手伝いをしないのは、いつやるかが決まっていないから
頼む仕事の中身は決まっているのに、いつ始めるかだけが決まっていません。お手伝いが動き出さないときは、ここが抜けたままになっていることがあります。「気づいたらやってね」と頼めば、気づくまで始まりません。仕事の名前と一緒に、いつ始めるかまで決めておくと、そこが始まりの合図になります。
声をかけているあいだ、親は「いま始めて」という合図を毎回自分で出しています。決まっていないから毎回出すことになり、出すたびに返事だけが返ってきます。始める時間を先に決めておけば、毎日決まって来るその時間が、代わりに合図を出してくれます。
家庭科では、家の仕事の分担と「いつやるか」を一緒に教える
5・6年の家庭科が家庭の仕事を扱うとき、出てくるのは分担だけではありません。小学校学習指導要領(平成29年告示)の解説 家庭編には、家庭の仕事を互いに協力し分担する必要があることと、生活時間の有効な使い方が、1つの項目のなかに並べて書かれています。指導するときはこの2つを関連付けて扱うように、とも書かれています。
生活時間の有効な使い方は、時間に区切りを付けたり、計画的に使ったりするなど、時間を工夫して使うことだと説明されています。誰が何を担当するかと、その担当をいつやるかは、はじめから同じ一組として想定されているわけです。
家では、担当だけを渡して、いつやるかのほうが抜けたままになりがちです。洗濯物をたたむのはこの子と決まっているのに、たたみ始める時間は毎日その場で決まります。だから毎日、始まりの合図を親が出すことになります。
学年ごとに何を頼めるかは、小学生のお手伝い一覧、学年別にまとめています。
「気づいたらやってね」を、時刻か場面に置きかえる
決めかたは2通りあります。「6時になったら」のように時計の時刻で決めるか、「夕ごはんの前」「おふろから出たら」のように、毎日決まって来る場面で決めるかです。場面に結びつけておけば、時計を見ていなくても始まりが分かります。
やることを、いつ・どこで・どうやるかまで先に決めておくと実行される割合が上がる、という研究の積み重ねがあります。ゴルヴィツァーとシーランが2006年にまとめたメタ分析は、この決めかたを試した94件の検証を集め、先に決めた人とそうでない人のあいだに、目標が実際に達成されたかどうかのはっきりした差が出たと報告しています。ただし94件は、家庭のお手伝いを直接調べたものではありません。家でも同じだけ効くかどうかまでは分かっていません。
時刻にするか場面にするかは、夕ごはんの前とおふろのあとを並べて、やりやすいほうを子どもに選んでもらう方法もあります。実際に動くのは子どもなので、どちらが始めやすいかは本人のほうがよく分かります。
決めた合図は、口で言っただけだと次の日には忘れられていることがあります。紙に1行だけ書いて目に入るところに貼っておけば、書き直すのも簡単です。書くのは「食器を運ぶ」ではなく、「夕ごはんの前に、食器を運ぶ」までです。決めた時間が来ても始まらない日が続くようなら、時刻と場面を入れ替えてみる手もあります。
毎回頼むのをやめて、決まった担当にする
「今日これやってくれる?」と毎回頼むやりかたは、毎回ことわれるやりかたでもあります。同じ仕事を決まった担当にしてしまうと、今日は頼むかどうかを親が判断しなくてよくなり、子どもの側も毎回返事を求められなくなります。解説 家庭編にも、分担した仕事をその後の生活でも継続的に取り組めるようにする、と書かれています。
どれを担当にするかを選ぶとき、家族のぶんまで届く仕事を手がかりにする方法があります。家の仕事と子どもの育ちを調べた研究に、グルーセックらが1996年に報告した調査があります。この調査は家の仕事を、自分の持ち物を片付けるような自分のための仕事と、食卓を整えるような家族のためになる仕事に分けました。人を気づかう行動が育っていたのは、家族のためになる仕事を受け持っていた子のほうで、自分のための仕事ではその差が出ていません。
ここで測られたのは、頼めばやるかどうかではなく、頼まれなくても人を気にかけるかどうかです。ですから「家族のための仕事なら動く」という話ではありません。それでも、担当を選ぶときの手がかりにはなります。食卓に人数分を並べる仕事や、家族のぶんまで洗濯物をたたむ仕事なら、やった結果が自分の外に出るので、ありがとうを言う場面もその場にできます。
決めた担当を、やったかどうかが目で見て分かるようにする
担当と時間を決めても、やったかどうかを毎日たずねることになると、たずねるほうが新しい負担になります。カレンダーに印を付ける、紙に書いて壁に貼るといったやりかたで見れば分かるようにしておくと、確かめるために声をかけなくてよくなります。
印を付ける役は、子ども本人でも親でも成り立ちます。子どもが付けるなら、終わったことをその場で自分で確かめられます。親が付けるなら、見ていたことがそこで伝わります。どちらにしても、確かめる場所が1か所に決まっていれば、その日やったかどうかを口でたずねずにすみます。ポイントを付けて渡すやりかたは、お手伝いポイント制の作り方のほうに書いています。
紙のカレンダーは、印を付けるところまでは同じですが、月が変わると前の月が見えなくなります。ゴホウビーストは、お手伝いごとにコインの数を先に決めておいて、終わったことを子どもが「やった!」と出すと、それが親の手もとに届きます。親は手が空いたときに「できたね」を押せばよく、押したぶんは記録として残ります。たまったコインで、子どもがビーストを引きます。
今日決めるのは、どの仕事を担当にするかと、いつ始めるかの2つだけです。この2つが決まっていれば、明日かける声は「時間だよ」の一言ですみます。
この記事のまとめ
小学生がお手伝いをしないときは、何から決めればいいですか
どの仕事を担当にするかと、いつ始めるかの2つです。「気づいたらやってね」のままだと始まりの合図がないので、夕ごはんの前、おふろから出たらのように、家で決まって来る場面に結びつけて決めます。やることを、いつ・どこで・どうやるかまで先に決めると実行される割合が上がることは、2006年にまとめられた94件のメタ分析でも報告されています。
お手伝いは何を担当にするのがいいですか
自分の持ち物を片付けることより、家族のぶんまで届く仕事から選ぶ方法があります。食卓に人数分を並べる、家族のぶんの洗濯物をたたむといった仕事なら、やった結果が自分の外に出るので、ありがとうを言う場面もその場にできます。1996年の調査でも、人を気づかう行動が育っていたのは家族のためになる仕事を受け持っていた子のほうでした。ただしこの調査が見ているのは、頼めば動くかどうかではありません。
お手伝いの担当は、いくつ決めればいいですか
まず1つで始められます。いくつも決めると、決めたぶんだけ毎日それを見て確かめることになります。担当を1つ決めて、その仕事が始まったかどうかだけを見るなら、確かめる先も1つですみます。増やすのは、その1つが続くようになってからでも間に合います。